iii Exhibition 8

本制作展「iii exhibition 8」の開催によせて諸先生方からメッセージをいただきましたので、ご紹介させていただきます。

『ご挨拶』
荒川忠一 (東京大学大学院工学系研究科 機械工学専
攻教授/制作展担当教員)

『ご挨拶』
原島博 (東京大学大学院情報学環教授/コンテンツ創
造科学産学連携教育プログラム代表)

『もうひとつの制作展』
鈴木太朗 (東京大学 大学院 情報学環 コンテンツ創造
科学 産学連携教育プログラム 人材養成 特任助教


ご挨拶

荒川忠一 教授

2004年夏より始まった東京大学大学院学際情報学府・東京大学大学院情報学環コンテンツ創造科学産学連携教育プログラム制作展"iii Exhibition"も、今回で第8回目を迎えようとしています。この制作展は大学院学際情報学府の講義の一環として始まり、学生が自らの手で科学技術の中に芸術的要素を織り交ぜ表現し発信するというコンセプトのもとに開催しております。

今日、大学院で研究されているような新しい技術は日進月歩である反面、開発した技術・メディアが一般の方の目に触れる機会はあまり多くありません。制作展は、本学内で得られた研究成果を、より多くの人に発信していくという目的で行なわれており、鑑賞者の方々自ら体験し楽しんでいただけるよう見せ方にも工夫を凝らしています。学生たちにとっては、研究で見いだした技術的な面白さを、芸術表現と融合することで、アートとして再構築するための新しい表現の場にもなっています。

また、個々に作品を制作するだけでなく会場設計から広報活動まで全ての企画・運営を学生たちが行っています。

今回の制作展は学環らしく文系・理系の学生、加えてコンテンツ創造科学産学連携教育プログラムにより他研究科からも様々なバックグラウンドを持つ学生が関わっております。多様な学生が集まり議論や試行錯誤を繰り返すことで、どなたにも楽しんでいただけるような展示会を目指しております。

作品の見せ方や実験的な表現手法など、お見苦しい点もあるとは思いますが、制作展を通して、作品を"魅せる"ことの重要性、その方法を少しでも学生たちが学ぶことが出来ればと考えております。ひとつひとつの作品をゆっくりとご鑑賞頂ければ幸いです。

 

皆様のお越しを心よりお待ちしております。



ご挨拶

原島博 教授

iii Exhibition(制作展)は、学際情報学府における教育の一環として企画されておりますが、同時に、東京大学大学院情報学環コンテンツ創造科学産学連携教育プログラムにおいても重要な意味を持っており、全面的に協力しております。コンテンツ創造科学産学連携教育プログラムは、映画、アニメーション、ゲーム、さらにはネット上の優れたデジタルコンテンツを生み出すことのできる人材の養成を目的として、2004年から5年間の計画で設置されております。

この制作展は、学際情報学府および、上記の教育プログラムに属する学生が、それぞれの専門分野の研究をふまえて、また、様々な専門分野の学生同士が協力し合いながら、コンテンツあるいはアート作品として一般にも受け入れられる形で展示する場となっています。

これからの科学のあるべき姿は、文理を融合した、社会に開かれた科学です。私自身も専門は工学で、これまで、工学は交通や建築、通信など社会のインフラ整備を目的としてきましたが、これからの工学は、そのようなインフラとしてのメディアから、文化としてのコンテンツへと昇華すること、すなわち、「文化創造学として工学」が求められています。単に技術的に何が可能かだけではなく、真理に基づいて作る、善いものを作る、美しいものを作る、という「真・善・美」を追求し、本当に人間にとって素晴らしい生活とは何なのか、文化とは何なのかという問いに答えていかなくてはなりません。

今後は、そのような文化創造、価値創造を行っていくため、広い意味での科学技術すべてにアート的な素養が要求されるでしょう。このiii Exhibitionでは、多くの人の目に触れる作品制作という 実践を通して、科学技術と文化芸術を結びつけ、新たな文化創造に向けて歩んでいこうとする情報学環の挑戦の一端にふれていただければ幸いです。



もうひとつの制作展

鈴木太朗 特任助教

 

この制作展の真の目的は何だろう。第4回から制作展「iii Exhibition」に関わっている私としてはもう5回も関わってきている訳だしある程度の結論が見えてきても良いはずなのに、実は未だに回答が出ないでいます。

 

メディアアートには大きく分けて2つのアプローチがあります。1つに、アート表現をおこなう上での技術を取り入れることでの表現の向上、もう1つに、先端技術をアートというジャンルを通して解りやすく表現すること。

 

さて、制作展の授業を受けている学生に上記2点の必要性はどれくらいのものでしょうか。この授業を受けている学生は情報学環の学生であり、文系、理系、専門分野を問わず多様なバックグラウンドを持つ学生です。必ずしもアーティストを目指している訳でもなく、東大の持つ最先端の技術をアートという枠を通してPRしようとしている訳でもありません。実際、技術的なことがまるで解らない学生もいる訳です。

 

私の中ではこの授業は “作品展示” というキーワードをもとにその背後でおこなわれる様々なことを体験する場であって欲しいと考えています。現在、作家の気持ちを解さないプロデューサーや運営サイト、展示開催までの苦労を知らない作家との間に距離があることを常々感じています。実展示では両サイドに不満が残ることもしばしばです。学生のうちに少しでも両サイドを体験する機会があったなら、この状況が少しでも好転する状況が生まれるのではないでしょうか。

 

この授業では、年2回ある制作展のうち、どちらか片方に原則作品を出展するという決まりがあります。また、作品を出展するだけでなく、必ず展示開催に関わる何かの役割に付くという決まりもあります。それは上記の理由があり、また、情報学環という枠の中でそれぞれの個性を、展示発表だけでなく得意分野でも具現化して欲しいと願うからです。

 

作品や会場等を見ると、正直シロウトの展示に見えてしまうかもしれません。メディアアート制作が初めての学生もいて、作品クオリティーのバラツキに苛立ちを覚えるかもしれません。その時は是非アンケート等を通してご意見を学生に直接伝えて頂ければと思います。それが学生にとって1番の勉強になることと考え、期待します。

 

正直、この授業は内容を多く抱えすぎているのかもしれません。目的が多すぎるのかもしれません。ただ、上記のことを全て味わえることにこの授業の意義があると考えます。高い目標を学生自らが掲げ、少しずつではありますが制作展は毎回前進しています。今回の展示、是非 “もうひとつの制作展”としての側面もご覧頂ければ幸いです。